小論文は、大学の一般入試をはじめAO入試や推薦入試などでも課される一般的な試験科目です。
小論文という課題があることは知っていても、どのように出題されるのかや書き方の基本などを理解していないことも多いです。
小論文には明確な解答がないため、受験勉強中に準備しておくべきことがわからない方もいるでしょう。
この記事では、大学入試の小論文の基礎的な知識と、受験対策としてやっておきたいことを詳しく解説します。
大学入試で課される小論文とはどのようなものか?
小論文とは、与えられたテーマに対する自分の意見と、それに対する論理的な理由や根拠を述べるものです。
思考力や記述力が試される試験科目なので、他のテストとは対策法が大きく異なります。
内申が重視されない自己推薦入試やAO入試などで小論文の課題が出ている場合、小論文の評価が合否判定に大きく影響する可能性があるのでしっかり押さえておきましょう。
AO入試や推薦入試の場合は、書類選考を通過し2次選考に移ったあとで小論文の課題が出されるケースが多いです。
この場合1000文字前後の比較的短めの出題で、制限時間内に書く「小論文試験」という形で行われるのが一般的です。
一方、大学入試のエントリー時に小論文課題が出るケースもあります。
エントリー時の小論文は3000文字以上とボリュームを求められる場合もありますが、そのぶん時間をかけてじっくり取り組むことができます。
小論文課題がどのようなタイミングと方法で課されるかによって対策方法も変わるため、まずは自分が受験する大学の入試情報をしっかり把握しましょう。※1
※1 スタディサプリ.基礎知識 大学・専門学校の小論文とは?
小論文と作文の違いは?
小論文を「作文」のようなものだとイメージしている方は多いかもしれません。
しかし、小論文と作文には明確な違いがあります。
小論文は与えられたテーマに沿って、自分の意見や主張を論理的に説明するものです。
一般論や多方面からの意見、そして自分の主張を織り交ぜて「論じる」ものになります。
一方作文は「テーマに対する個人的な感想文」です。
自分の気持ちや主張を自由に述べるものになります。
作文の評価としては、文章の美しさや読後感などの余韻も評価されますが、小論文にはこのような表現力は必要ありません。※2
入試に小論文を取り入れる大学とテーマ例
実際に入試に小論文を取り入れている大学と、テーマの例をいくつか紹介します。
【北海道大学 教育学部 2019年度入試】
・鈴木啓嗣氏の著書「子どものための小さな援助論」の一部分を読んで、子どもの援助に対する意見を述べる(1000文字)
・苅谷剛彦氏の著書「イギリスの大学・ニッポンの大学」の一部分を読んで、日本の今後の大学教育のあり方についての意見を述べる(1000文字)※3
【九州大学 文学部 2020年度入試】
西研「哲学は対話する」の一部分を読み、筆者が「合理的な共通了解を形づくることが必要」だと考えた理由を説明し自分の考えを論じる(1600字)※4
【一橋大学 法・社会学部 2017年度入試】
ヘイトスピーチをテーマに書かれた英文を読んで2つの課題に取り組む。
・ヘイトスピーチに関する筆者と筆者の同僚との見解の違いを、課題文の内容から要約する(700字以内)
・2016年に日本で成立したヘイトスピーチ対策法について、ヘイトスピーチが生まれる背景を踏まえ、法的に規制することの妥当性について自分の意見を述べる(700字以内)※5
【信州大学 理・物理学部 2020年度入試】
水循環に関する2つの論文要約の和訳を読んで3つの問いに答える。
・空欄補充問題および傍線部説明問題について答える(100字)
・傍線部説明問題に答える(100字)
・「蒸発散量の将来予測精度を向上させるために、今後何を明らかにすべきか?」という質問に対する具体的な考えを2つ答える※6
上記は一例ですが、学部によってテーマや出題方法の傾向が大きく違うことがわかります。
同じ小論文科目でも、出題方法によって情報のまとめ方や文字数の制限なども異なるため、志望校が過去にどのような小論文課題を出しているか下調べするとよいです。
※3 代々木ゼミナール(予備校)入試情報.北海道大学
※4 代々木ゼミナール(予備校)入試情報.九州大学
※5 代々木ゼミナール(予備校)入試情報.一橋大学
※6 代々木ゼミナール(予備校)入試情報.信州大学
大学入試における小論文対策で押さえたいポイント
小論文に苦手意識を持ったり、不安を感じたりしているなら、以下のポイントを押さえて受験対策をしていきましょう。
【ポイント①】志望校入試の傾向を把握する
まず最初にやるべきなのは、志望校の過去の入試情報を見ることです。
「入試に小論文を取り入れる大学とテーマ例」の章で紹介したように、大学や学部ごとに小論文の出題スタイルの傾向があります。
なお、大学入試の小論文は「テーマ型」「課題文型」「データ型」「志望理由型」に分類できます。
テーマ型は、与えられたテーマについて自分の意見を述べるもの。
課題文型は、課題となる文章を読み、内容を把握した上で自分の意見を述べる形式です。
データ型はグラフや図表などを見て、そこから読み取れる結果を分析します。
さらに、志望する大学や学部に進みたい理由や、志願動機をまとめる小論文課題が出るケースもあります。※7
この4つの型を理解し、自分の志望校の過去の出題傾向を見てみましょう。
【ポイント②】出題の意図を理解する
どのようなタイプの小論文課題であっても、出題の意図を正しく理解するのが大切です。
何を要求されているのかを把握しましょう。
制限時間内で取り組む小論文テストの場合は特に注意が必要です。
課題文や資料をしっかり読み、短時間で内容を正しく読み解くことも重要になります。
【ポイント③】小論文の基本構成に沿ってまとめる
小論文の基本構成を頭に入れ、その構成に沿ってまとめるのも大切なポイントです。
小論文は「序論」「本論」「結論」の3つの構成に当てはめながら書くと、論理的で伝わりやすい内容にまとまります。
【①序論】
小論文で取り組む課題について示し、自分なりの論点や意見を述べます。「私は~~について、~~と考える」のように、短く簡潔に述べるのがコツです。
【②本論】
自分が述べたい意見への理由や根拠などを示します。
小論文の肝となる部分なので、根拠となる事例やデータ、自分なりの考察などしっかり説明するのがコツです。
【③結論】
序論で示した自分の意見を、再度結論としてもう一度述べます。
序論と本論は一致していることが重要です。
序論や結論を、本論でしっかり裏付ける必要があります。※2
上記3つの構成とその流れを念頭に置き、これに沿って書いていきましょう。
実際に小論文を書く「演習」を繰り返すことで、説得力のある論理的な小論文が書けるようになります。
【試験対策トレーニング】ニュースを100~200字でまとめる
小論文対策として、日常的に新聞やネットニュースなどの内容をまとめるトレーニングをしてみましょう。
小論文は、他の教科テストのように決まった正解のある課題ではありません。
情報と自分なりの見解をまとめて伝える力が必要です。
毎日ひとつのテーマや問題について考え、100~200文字程度にまとめる習慣をつけてみてください。
特に新聞は、専門家による最新の情報や考察が端的にまとめられているため、読みやすいです。
また制限のある中で意見をコンパクトに述べるための参考にもなるのでおすすめ。
小論文で重要な「根拠」となるエビデンスも確かな媒体なので、新聞を大いに活用してみてはいかがでしょうか。※8
※8 EduA.小論文対策に新聞を活用しよう 代ゼミのカリスマ講師・船口明さんが解説
まとめ
大学入試の小論文について、基礎的な知識と受験対策のポイントを紹介しました。
小論文には複数の型や、大学・学部ごとの出題傾向があります。
志望校の傾向をしっかり押さえ、論理的な説明文の基本構成に沿って書けばそれほど難しくありません。
普段からニュース記事や新聞を読んだり、物事について自分なりの考察をしたりする習慣が功を奏すといえます。
思考力や論理力を鍛えながら書く練習を繰り返し、確実に力を付けていきましょう!
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