熟成ホップ研究所

INHOP - The Hop Company

2020. 10. 20 15:02

熟成ホップ 研究者インタビュー ❸
阿野泰久 研究員

キリンホールディングスが10年にわたり研究を続け開発した「熟成ホップ」。
この新しい健康素材の誕生の秘密について、研究者にお話をお伺いするインタビューのシリーズです。
開発者にしか分からない苦労やソリューションを掘り下げてお聞きしました。
第3回は『キリンホールディングス R&D本部 キリン中央研究所』の阿野泰久研究員です。

集中力の向上や体脂肪の低減、認知機能のサポートなど、健康機能が認められた自然由来の素材「熟成ホップ」。この新しい健康素材の誕生の秘密について、実際の開発者にお話を伺いました!

第3回にご登場いただくのは『キリンホールディングスR&D本部キリン中央研究所』の阿野泰久研究員です。

学生時代から、狂牛病などの脳疾患の研究をされていた阿野さん。狂牛病の原因は食べ物に関わるところが大きく、食の安全への意識が高まるきっかけとなった病気です。阿野さんも、何を食べるとどのような病気になるのかという研究をしていく中で、食品の安全性といった分野に興味を持ち、食品メーカーであるキリンへ入社しました。

入社してからは、医薬品開発や免疫の研究に携わった後、前から関心のあった脳疾患、認知症やうつをテーマにした新しいプロジェクトを自ら立ち上げ、食に関する脳科学分野での研究を進めてこられました。

脳は全ての健康の基本

“満足している” “幸せである”と感じるのは脳。体に“動きなさい”と指令を出すのも脳。私たちの体の中で、特に人間らしさを司っているのは、脳の発達であると阿野さんは話します。人間特有の病気が、脳に起因することが多いのも事実です。認知症やうつもそのひとつ。様々な病気が治せるようになってきていますが、脳の領域では認知症など治療方法が十分ではない疾患もあります。そのため脳の健康を守ることはQuality Of Life(生活の質)向上につながっていきます。私たちのように長寿の社会においては、脳の健康はますます重要になってきているのです。

そして、脳の健康において、食事は大きな役割を果たしています。私たちが摂取した栄養の多くは脳で使われているため、食事と脳を切り離すことはできません。特定の食習慣が認知症のなりやすさに関わっていることも、すでに研究で明らかとなっています。バランスの良い食事をとることがひとつの予防策ですが、現代人にとって、なかなか習慣化することは難しい。そのため、食習慣をサポートできるような食材に注目が集まっているのです。

熟成ホップと脳腸相関

昔から適量のお酒を嗜んでいる人は、うつや認知症になりにくいことが知られています。阿野さんはその観点から、ビールの原料であるホップの持つ健康効果に着目しました。そして脳の認知機能に作用する食品成分を判定するシステムを使い、ホップの苦み成分「イソα酸」を発見したのです。ビール原料の成分が認知機能を改善するというニュースは、世間でも注目を集めました。このイソα酸の苦味を、熟成させることでまろやかにし、食品へと展開しやすくなった素材が「熟成ホップ」です。

脳を刺激したり認知機能を改善する成分は他にもいくつか発見されていますが、熟成ホップが持つ認知機能改善効果には大きな特徴があります。それは直接脳へ届くのではなく、腸にある脳活性化のスイッチ(苦味受容体)に作用するということ。実は腸は脳と非常につながりの強い臓器。神経細胞が脳の次に多いのが腸で、第二の脳とも言われています。

一見、直接脳へ届く方が効果的に思えますが、口から摂取した栄養成分は血液脳関門という壁を通過しなければならないため、脳へ届くのはごく微量です。一方、熟成ホップは多くの栄養成分が吸収される腸に届いて苦味受容体を活性化します。成分が脳へ届かなくても、脳と腸を繋ぐ神経回路を活性化することで、様々な脳機能を調節できます。その結果、記憶力や集中力だけではなく、不安感や脳の疲労感の改善、体全体の機能調節まで行うことができるのです。

苦味を慣れ親しんだ味に

認知症の予防という大きなテーマに、周りからは実現性がないと言われながら、阿野さんは研究を続けていたそうです。自分で脳領域の重要性や市場性を会社に説明しながら、研究領域を拡大。可能性を信じてやってみようという上司の後押しや、共感してくれる仲間のサポートも得ながら、ようやく熟成ホップの開発に至りました。

阿野さんはこの熟成ホップについて「苦味というのは料理などではあまり使われない味。それが世の中に浸透して、より好まれる味付けになると面白いなとも思っている。」と言います。辛味や塩気は自分の味付けで調整する習慣がある。苦味でもそんな調味料があってもいいのではないか?というユニークなアイデアを語ってくださいました。

苦味という嗜好性と、認知機能改善という健康ベネフィットをあわせ持つ熟成ホップ。阿野さんからのバトンを引き継ぎ、この熟成ホップを活用した新たな食スタイルを今度はINHOPが開発していきます。ご期待ください。

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