熟成ホップ研究所

INHOP - The Hop Company

2020. 11. 10 15:00

熟成ホップ 研究者インタビュー ❹
ドクターホップ 村上敦司氏

キリンホールディングスが10年にわたり研究を続け開発した「熟成ホップ」。
この新しい健康素材の誕生の秘密について、研究者にお話をお伺いするインタビューのシリーズです。
開発者にしか分からない苦労やソリューションを掘り下げてお聞きしました。
第4回は“ドクターホップ”こと村上敦司氏です。

集中力の向上や体脂肪の低減、認知機能のサポートなど、健康機能が認められた自然由来の素材「熟成ホップ」。この新しい健康素材がもつ可能性について、ホップを熟知する研究者にお話を伺いました。

お話を伺ったのは“ドクターホップ”こと、元キリンホールディングスR&D本部飲料未来研究所リサーチフェローの村上敦司氏です。

世界で6人しかいない、ドイツホップ研究協会の技術アドバイザーでもあった、世界有数のホップ研究者である村上さん。その研究者人生は畑での農作業から始まりました。ホップ農家の方と連携しながら、ホップの栽培技術や品種改良、特に「ホップの香りの遺伝」について長年研究された後、ビールの醸造の研究に着手します。当時、ビールは苦ければよいという風潮があった中で、村上さんは自らの研究を生かし、香りを楽しむビールを発案。様々な品種があるにも関わらず、その品種を無視した使い方をしている現状を変えるため、何百ものビールサンプルを試飲し、それぞれのビールにあったホップの香りと品種、使用方法を体系立ててきました。

「研究者は博士論文を書いて、それが認められることが喜び。しかし、醸造を経験する中で、その喜びの提供先がお客様へと変わっていった」と語る村上さん。その思いが、村上さんの代表作となるビールを生み出します。それは、2002年に発売されたビール『一番搾りとれたてホップ生ビール』。日本産ホップを使用し、大手ビール会社としては初めて、ホップの香りを意識した商品となり、その発想はビール愛飲家たちの間で大きな話題となりました。

こうした研究への情熱は、後に自らの名前を冠したホップの育種へとつながっていきます。いちじくやマスカットのような日本らしい香りが特徴の『MURAKAMI SEVEN』。20年以上前に、採算が合わないという理由から日本産ホップの品種改良が打ち切りになってしまった時、廃棄されるはずだったホップの中から、20種類を村上さんが救い、岩手県のホップ管理センターに移し替え、研究を続けていたもの。この新品種のホップでビールを試作したところ、びっくりするほどの美味しさとなり、その香りは海外ブルワーからも絶賛。7番目の畝に植わっていたことからMURAKAMI SEVENと名付けられ、世界の市場に打って出る競争力を持った唯一無二のホップブランドとして、知れ渡ることになったのです。

ホップの力で日本に新しいビールの価値観をもたらし、さらに世界で戦える日本産ホップの開発に成功した村上さん。ホップの可能性を知り尽くした村上さんには、熟成ホップの未来はどのように見えているのでしょうか。

ドクターホップが語るホップの未来

ホップをサイエンスの側面から研究し、知れば知るほど「知らない」ということがわかってくると語る村上さん。

今はホップについて語れる人は、ビールが好きな方しかいないのが実態。しかし、ホップの用途はビールだけではない。脳機能の改善や血圧の低下など、様々な健康分野で活用できる可能性が見えてきました。ホップが、ビールを飲むという行為だけではなく、お客さんの行動様式まで変える。健康にまで作用する。そんな可能性が見えてきたことが素直に嬉しいとおっしゃっています。

また、村上さん曰く、ホップの力はこれだけではありません。ホップの苦み成分の効果の1つに、体脂肪の燃焼がありますが、ホップにはまだまだ自分たちが知らない成分が数多く隠されており、研究すれば研究するほどその効果が見えてくる。世界でも研究が進んでいない分野だからこそ、日本の研究者たちにもっとホップに注目してもらいたいと語ります。

畑でホップを栽培し、ホップの持つ可能性にいち早く気づき、その可能性を拡張し続けてきた村上さんだからこそ、ビールの文脈だけではなく、健康や痩身など様々な分野へと間口が広がっていく世界が早く来てほしいと期待されています。熟成ホップや今後の研究によって、新しい可能性の扉が開かれる。そしてその扉の先に明るい未来が待っている。そんな展望を語ってくださいました。

私たちINHOPも、その扉を開けるための一歩となる熟成ホップの商品を、これからも考え続けたいと思います。

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